・他のテキストや問題集もやった方がいいのだろうか。
・もっと多くの問題に慣れた方がいいのではないか。
勉強を始めてしばらくすると、このような不安が芽生えてきますよね。
この記事では、この不安を吹き飛ばす方法をメリット・デメリットもあわせて紹介しています。
行政書士試験に限らず、他の資格 試験や大学受験等のあらゆる試験に通用する内容です。
記事を読み終えたころには、この問いに関する不安や迷いを解決していることでしょう。
試験勉強の鉄則
試験勉強では、一冊の問題集を完璧にすることが合格への近道という格言があります。
一冊の問題集を完璧にすることで、深い知識や理解を得られて実力が付き、成績が伸びる。
という意味です。
しかし、ここで疑問が生まれます。
完璧とはどのような状態を指すのか。
そして、なぜいろいろな問題集を使うのは良くないのか。
という疑問です。それぞれ考えてみましょう。
なお、完璧にすべき最強の問題集はこちらで紹介しています。
完璧の定義
完璧とはどのような状態を指すのでしょうか。辞書で言葉の意味を見てみます。
完璧とは、 欠点のないこと。完全無欠ですぐれているさま。また、残るところなく、すべてにわたるさま。
精選版 日本国語大辞典
これを一冊の問題集を完璧にすることに当てはめて考えると、
その一冊の問題集の論点を全て理解したうえで、内容も記憶していること。
となります。これが一冊を完璧にするの意味です。
最初にこの定義を理解してください。
それをふまえた上で、問題集を完璧にすることの注意点をお伝えします。
問題集の完璧とは
上述した通り、一冊の問題集を完璧にする=問題集の全ての正答がわかっている状態
ではありません。
その問題集に収録されている全ての問題を、正しい理由も説明した上で解答できる状態を意味します。
つまり、全ての問題の重要なポイントをしっかりと理解した上で、結論を導き出せる状態です。
完璧の意味を間違えて、全ての問題の正誤判断ができるという捉え方をしてしまうと、せっかく問題集を何週も繰り返したにもかかわらず、内容が理解できていないという状態になってしまいます。
絶対に意味をはき違えないよう、気を付けてくださいね。
複数の問題集を使うことについて
普通に考えれば、複数の問題集で勉強した方がより多くの知識を習得できそうですよね。
しかし、複数の問題集で勉強したからと言って、それが得点力に繋がるとは限らないのです。
その理由について、記憶の定着と行政書士試験の特性という2つの点からご説明します。
記憶の定着
一番大きい理由がこの記憶の定着です。
カナダのウォータールー大学の研究結果によると、授業を受けたその次の日までに何も復習しなかった場合、学んだことの50%〜80%が失われるそうです。この研究によれば、授業を受けた24時間以内に10分かけて復習、一週間後に5分程度復習、1カ月以内に2~4分復習すると、長期記憶になるようです。
東大セミナー
こちらの研究結果が示している通り、一度学んだこと(短期記憶)を長期記憶に変えるには、短い期間に同じ情報を繰り返し脳に入れることが必要です。
つまり、複数の問題集に手を出すとなれば、その内容を記憶させる為にかかる時間も量も増加します。
限られた時間の中で、何冊もの問題集を何度も復習することは現実的ではありません。しかし、復習しなければ、せっかく学んだ知識も忘れてしまいます。
ですから、網羅性の高い1冊の良質な問題集を繰り返し、長期記憶に変えることが大切だと先人達は伝えているのですね。
問題集のクセ
問題集には問題集特有のクセが存在します。
そのクセは、収録されている問題の違いをはじめ、重要度ランクの違い、解説の違い、表現の違い等、多岐にわたります。
この中でも、受験生にとって特に影響が大きいのが解説の違いです。
人に何かを教えてもらう時、一人の人から教えてもらうのと、複数の人から教えてもらうのでは、一人の人から教えてもらった方が理解しやすいですよね。
これと同じことが起こります。
人それぞれ説明の仕方が異なるように、同じ問題でも出版社によって解説の仕方が異なります。
不要な混乱を避ける為にも、まずは1冊を完璧にすることが合理的です。
行政書士試験の特性
もう一つの理由は行政書士試験の特性にあります。
行政書士試験は司法書士試験のように知識量が問われる試験ではありません。
法律を使って物事を解釈する力=法的思考力が問われる試験です。もちろん知識量はあるに越したことはないですが、試験合格のために重要ではありません。
つまり、複数の問題集を使う理由がないのです。
だからといって、総合問題集のように1つの論点につき2、3問程度の問題しか収録されていない問題集だけでは太刀打ちできません。
そのため、最強の問題集でおすすめしているような、網羅性の高く、良質な問題集を選ぶことが大切です。
複数の問題集のメリット・デメリット
では次に、複数の問題集を使うことのメリット・デメリットについて考えてみます。
複数の問題集を使うメリット
複数の問題集を解くメリットとしては主に
1、様々な問題に慣れることができる
2、知識量が増える
3、自信につながる
の3つがあります。
中でも、様々な問題に慣れることができるは非常に大きなメリットです。
内容は理解しているのに、出題の仕方を変えられると途端に答えられなくなった経験はございませんか?
このような事態を防ぐのにとても役立ちます。
また、関連する問題集の数をこなせば知識量も当然増えますし、こなした問題集の数が多ければ多いほど、自分の努力が形として残るため、自信を持つことも可能です。
新しい問題集を使うことによって勉強の気分も変わるかもしれません。
複数の問題集のデメリット
当然ながら、デメリットも複数あります。
1、時間が大幅にかかる
2、すでに解ける問題をまた解くこと(=無駄)になる
3、お金がかかる
の3つです。
まず時間の観点から考えてみましょう。
1冊の問題集を最初から最後まで解き切るためには、かなりの時間がかかります。
独学というモチベーションの管理が非常に難しい環境において、大変な時間と労力をかけて複数の問題集を何度も復習する作業は現実的ではありません。(復習が中途半端になってしまった場合の弊害は上で説明した通りです。)
また、新しい問題集を使う度に既に理解している論点の問題も解くことになります。
言い換えれば、できない問題をできるようにするのではなく、できる問題をひたすら繰り返している状態です。
これではいつまで経っても合格の可能性を上げることができません。
複数の問題集を使うことで、「骨折り損のくたびれ儲け」になる可能性は非常に高いです。
次に金銭面です。
たかが1冊の問題集と言えども、安いものでも1000円程度、高いものだと3000円近くするものもあります。
これに加えて、過去問や予想問題集のような受験に必須の教材も考えると、万単位のお金が飛ぶことになります。
裕福な方であれば問題はないと思いますが、そうだとしても無駄にお金を使う必要はありません。
それだけでは済みません。問題集を買うという行為は新たな問題を発生させます。それがサンクコスト効果です。
問題集を買っただけで終わるのであれば金銭的な損失だけで済みますが、人には損をしたくないという感情があるため、買ったからには手を付けたい、という気分に必ずなります。
そうなると先程の問題にぶち当たります。これはまさに、お金で不安を買うようなものではないでしょうか。
時間に余裕がある場合でなければ、ほんの少しのメリット(効果)のために、これらの大きなデメリットを受け入れなければならないことを知って欲しいと思います。
試験勉強の鉄則 まとめ
以上、メリット・デメリットも比べながら、複数の問題集を使うことの是非について見てきました。
当塾では、択一対策・記述対策・文章理解対策と各分野1冊程度に絞って、それを完璧にすれば合格できると確信しており、受験者のみなさまにもそのように指導しております。
複数の問題集を使うのは、1冊の問題集を完璧にし終えた後で、かつ、時間を確保できる場合だけです。
複数の問題集を使うことについて色々な論議があるかと思いますが、この記事の内容も参考にしていただいた上で、みなさまにとって悔いのない選択をしていただければと思います。
こちらの記事で、1冊の問題集を完璧にする方法について詳しく解説しておりますので併せてお読みください。