行政法を学習する上で非常に紛らわしい公権力側の行政行為に働く特殊な効力、
拘束力・公定力・執行力・不可争力・不可変更力の5つ。
この中でも特に、不可争力と不可変更力はどっちがどっちか迷うことがあるかもしれません。
そこで今回はこの2つの見分け方をお伝えいたします。
この記事を読めば、 不可争力と不可変更力で迷うことはなくなります。
見分け方
『紛争裁断行為であれば不可変更力、期間・期限の論点であれば不可争力』です。
紛争裁断行為とは、裁判の判決や審査請求に対する裁決等のことで、
争い(もめごと)に対して白黒の決着を付ける判決や解決のことをいいます。
不可変更力とは
不可変更力は紛争裁断行為にのみ働く力で、裁決者側(判断を下した側)に働く力です。
一度判決が確定したらそれが違法であっても取り消しや変更できなくなります。
裁決が確定した後に『やっぱ間違えてたから取消だ!』なんてことがまかり通れば裁決の意味がなくなってしまいます。
不可争力とは
不可争力とはその名の通り、国民側から行政行為について争うことができなくなるという効力です。
不可争力は訴訟期限のようなもので、行政行為後、一定期間が過ぎるとその行政行為を取り消せなくなります。
よりわかりやすくするために、一つ例を作ってみます。
不可争力の例
※不可争力の説明に重きを置いている為、行政手続法の内容については省略しています。
私はラーメン屋を営んでいます。
いつも通り営業していると、行政庁から○○の法律の重大な違反の事実が認められるため、許可の取消し処分を下す予定だと言い渡されました。
しかし私には思い当たる節は無く、許可を剥奪されると今後の生活に困窮するのは明白です。
当然、この行政処分の取消しのために準備しました。
しかし、予想以上に時間が掛かり、取消訴訟を提起できたのは半年以上経過した後。
裁判に向けて意気込んでいたのもつかの間、
不可争力の期限超過で裁判所からあえなく【却下判決】が出てしまい、許可取消し処分が有効に決定してしまい、泣く泣く廃業することになってしまった。
処分から一定期間が経つとたちまち争うことができなくなるこの恐ろしい力。
これが不可争力です。
言葉は似ていても内容は全然違いますね。
ちなみに処分を下した側(行政庁側)は一定期間が経っても処分を自ら取り消すことができます。(これを職権取消しと言います。)
不可争力はあくまで国民側に適用される効力です。
不可争力の期限
不可争力の期限はいつなのでしょうか。
これは争う方法によって異なります。
行政不服審査法の不服申し立てを行った場合は
『処分があったことを知った日の翌日から起算して3カ月』です。
一方、行政事件訴訟法の取消訴訟を提起するのであれば
『処分があったことを知った日から6か月』です。
『知った日から』と『知った日の翌日から』、『3カ月』と『6か月』という違いは、良くひっかけで出題されますので正確に覚えておきましょう。
不可抗力と不可変更力 まとめ
『一定期間が経過してしまった』のように期間・期限に関する論点⇒不可争力
『裁決後~』のように紛争裁断行為に関する論点⇒不可変更力
である可能性が非常に高いです。
迷ったときはぜひこの知識を活用してみてください。