ヤミ小作って何だろう?
今回は、農業に関心がある方は一度は耳にしたことがあるであろう【ヤミ小作】についてご説明します。
この記事を読めば、ヤミ小作がいかにリスクが高い行為であるかがわかります。
知識がなければ知らずにおこなってしまう可能性もあります。
ここで必要最低限の知識を習得し、違反することがないようにしてくださいね。
ヤミ小作の概要
ヤミ小作とは、農地法の許可・届出を得ずに無断で農地の貸し借りを行うことをいいます。
「ヤミ」には正規の手続きによらない取引という意味があり、「小作」は土地の利用料を支払って、地主(土地の所有者)から借りた田畑を耕作することをいいます。
農地法3条の記事でご説明した通り、農地の貸し借りを行う場合は原則農業委員会の許可(届出)、もしくは利用権設定を受ける必要があります。そのため、無断で貸借を行った場合は当然、農地法違反となります。
農地法3条違反の罰則
農地法3条違反の場合、
3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
という、かなり厳しい処罰を受けることになります。
ヤミ小作のその他のデメリット
そうはいってもバレなければ大丈夫なのでは?と思った方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、法律違反以外にどのようなデメリットがあるのかも見ていきましょう。
補助金の申請
一番大きいのは補助金の申請が難しくなることです。
農業は国の礎となる超重要な産業です。
年々農業労働者が減少していることや設備投資に大きな費用がかかることから、国や地方自治体は手厚い補助金制度で農家や新規就農者を支援しています。
その補助金の申請に大きな支障をきたすことになります。
それどころか、申請時にヤミ小作を行っていることが発覚し、処罰される可能性もあります。
権利の保護
ヤミ小作を行っている=違法状態ですから、万が一、トラブルが起きた場合、救済される術がなくなります。
このようなケースを考えてみましょう。
Aさん(借り手)とBさん(貸し手)は農業委員会を通さず、農地の賃貸借契約を結びました。
いつものようにAさんが野菜を栽培していると、突然Cさんが現れ、
「ここは俺の農地だ。当然、この野菜も全て俺のものだ。」と主張してきました。
詳しく話を聞くと、
BさんはAさんに内緒でCさんと正式に賃貸借契約を結び、当該農地を貸し出していたことがわかりました。
つまり、Aさんは、Cさんの農地で勝手に野菜を植えて育てていたということになります。
このような場合、Aさんはこの農地に関して無権利者である為、Cさんに対して権利を主張することができません。
Aさんが行ったヤミ小作は法律違反ですから、当然、公的機関に相談することも難しいでしょう。
Aさんは泣く泣く大切に育てた野菜を諦めなければならなくなってしまいました。
これは極端な例ですが、このようなケースは起こり得ます。
貸し手側のデメリット
ヤミ小作は借り手側だけでなく、貸し手側にもデメリットが存在します。
どういう可能性があるか見てみましょう。
賃借権の時効取得
民法第163条には、このような条文があります。
第百六十三条 所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、
平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い二十年又は十年を経過した後、その権利を取得する。
民法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
通常、正規の手続きを通さない農地の賃貸借契約は無効として扱われますが、
それが20年以上にわたって行われた場合、民法163条の条文により、賃借権を時効取得される可能性があります。
また、農地返還を請求した際、借り手側から離作料を請求される可能性があります。
相続時のトラブル要因
農地の所有者が亡くなり、相続人が農地を相続した場合、
誰に貸しているのかわからなくなってしまい、トラブルの元になる可能性があります。
※相続問題でお悩みの方へ
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農地の返還請求が困難になる可能性も・・・
ヤミ小作を行ってしまうと貸し手側も救済措置を取れない為、農地の返還請求が困難になる可能性があります。
まとめ
これまで見ていただいたように、法律違反はもとより付随するデメリットも大きなものがあります。
手続きが面倒だから とヤミ小作を行うケースも見受けられますが、
将来のトラブルを防止するためにも、必ず正式な手続きを踏むようにしてくださいね。
なお、農地の賃貸借は、農地法第3条の許可以外の方法でも行うことができます。
後日、ご紹介いたします。
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