一般の人は農地の売買や貸借ができないのか?
当記事ではこの疑問を通して農地法3条についてご説明いたします。
この記事を読めば、農地を売買・貸借するための条件がわかります。
農業を始めようと考えている方には是非読んでいただきたい内容です。
それでは見ていきましょう。
農地法3条とは
まずは農地法3条の条文を見てみましょう。
農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。
農地法第3条 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=327AC0000000229
農地法3条とは、農地の売買・貸借等、権利移転をする場合 に適用される条文です。
例えば、これから農業を始めようとする人が農地を買う、借りるには農地法の許可が必要になります。
許可制度にすることで一定の農地を確保・管理し、また、原則農業経験があり、農地を効率良く活用できる農業者や農業法人に農業経営を任せる為に厳しい規定を設けているというわけです。
この許可を取らずに売買契約等を行った場合、その契約は無効になります。
※ちなみに農地法の許可を得ずに勝手に農地を貸借することを【ヤミ小作】と呼びます。
ヤミ小作についてはこちらの記事で解説しています。
ところで、農地法3条の許可を得るには大変厳しい条件があり、農業に参入できない要因の一つとなっています。
農地法3条の許可条件はどれほど厳しいのか。一つずつ見ていきましょう。
※自治体毎に異なる場合がございます。詳細は農地所在地を管轄する自治体にご確認ください。
農地法3条の許可要件
全部効率要件
全部効率利用要件とは、農地全てを効率利用できると認められることを指します。
農地の広さに応じた機械や人員、技術を備え、効率的に農地を利用できることを客観的に証明する必要があります。
なお、農業で用いる単位についてはこちらの記事で解説しています。
農作業常時従事要件
農作業常時従事要件とは、一定日数以上の農作業に従事することをいいます。
一定日数の基準は自治体によって異なりますが、150日以上の日数が一般的です。
下限面積要件
下限面積要件とは、一定面積以上の農地を所有していることをいいます。
こちらも自治体によって異なりますが、一般的には50アール以上の面積が基準となっています。
この面積は取得予定の農地面積と現在所有している農地面積の合計で判断します。
例えば、今20アールの農地を持っている方が30アールの農地を取得するために農地法3条許可を申請するような場合、20+30=50アールとなり、要件を満たします。
地域との調和要件
地域との調和要件とは、当該農地を取得することにより、周辺の農地の効率的な利用に支障きたさないかどうかを確認するための要件です。
以上の4つが基本的な要件となりますが、例外規定が設けられていることもあります。
農地法3条の要件適用者の範囲
農地法3条の許可要件は農地の権利を取得しようとする本人か本人の世帯員で満たせばよいことになっています。
世帯員の範囲は農地法2条に記載があります。
この法律で「世帯員等」とは、住居及び生計を一にする親族(次に掲げる事由により一時的に住居又は生計を異にしている親族を含む。)並びに当該親族の行う耕作又は養畜の事業に従事するその他の二親等内の親族をいう。
一 疾病又は負傷による療養
二 就学
三 公選による公職への就任
四 その他農林水産省令で定める事由
農地法第2条 2項 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=327AC0000000229
二親等内の親族とは、祖父母・父母・子・孫・兄弟姉妹を指します。
配偶者がいる方は配偶者の 祖父母・父母・子・孫・兄弟姉妹 も含まれます。
この範囲の誰かが先の要件を満たしていれば、許可を受けることができます。
まとめ
これまで見てきたように、農地法3条は効率よく利用できる農業者に農地を使わせたいという農地法の目的を満たすための条文です。
そのため、農業経験者以外の人が許可申請を提出しても、原則通らないということになります。
農業経験が無い人が農地を借りる際は、農地法3条の許可を申請するのではなく、農業経営基盤強化促進法や農地中間管理事業法(農地バンク) を活用しましょう。
これらについてはまた別記事でご紹介いたします。
農地法に違反した場合の罰則についてはこちらの記事で解説しています。
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