行政書士試験の法令科目において、行政法、民法に次ぐ重要科目、憲法。
小学校・中学校の社会、公民分野で学習したこともあり比較的馴染みのある科目ですが、行政書士試験においては難易度が高く、苦戦する人も多いと思います。
配点もそこまで高くないので捨てようかどうか迷っている方もいるのではないでしょうか。
そこで、今回の記事では憲法科目の対策法についてご紹介し、一人でも多くの方の憲法の苦手意識を吹き飛ばしたいと考えています。
当記事が、
・どのように勉強すればよいかわからない
・なかなか得点できない
方の憲法攻略の糸口を見つける役に立てば幸いです。
余談ですが、憲法は司法試験、司法書士試験等、別の資格試験や公務員試験でも難しい傾向にあります。
憲法に苦手意識を抱く受験生は数 多く存在し、差が付きにくい分野ですので、苦手でもとくに問題ありません。
憲法の構成・配点・難易度
憲法の問題構成は、5肢択一式が5問、多肢選択式が1問となっており、配点は合計28点となっています。
法律系科目では行政法、民法に次いで3番目に位置しています。
毎年難問が数問含まれるのが特徴で、難易度は高いです。記述がないのがせめてもの救いです。
ただし、28点中半分以上が基本的な問題であり、しっかりと基礎を抑えていれば正解するのは簡単です。
半分以上(20点以上)の得点を目標に、学習を進めることをおすすめします。
ちなみに憲法は基礎法学の内容とも関係しています。
憲法を学習することで基礎法学の対策にもなる美味しい分野でもあります。
余程の事が無い限り捨て科目にするのはおすすめできません。
最悪捨てるのなら商法・会社法の方をおすすめします。
憲法科目の構成
憲法は人権分野と統治分野で構成されています。
人権分野は幸福追求権や思想及び良心の自由、表現の自由、生存権などの人権に関連する内容で理解を要求され、統治分野は天皇、内閣、立法(国会等)、司法(裁判所等)等、日本国の統治の仕組みについての内容で記憶を問われるものとなっております。
一つずつ見ていきましょう。
人権分野
人権分野においては条文知識よりも判例が重要です。
憲法には【人権】について規定されていますが、その保護される範囲や具体的な内容については裁判所の解釈によって決まります。
そのため、判例が重要であり、行政書士試験で出題される憲法対策としても判例を中心とした学習が必要かつ効率的です。
判例学習というのは事件の結果、つまりその事件となった行為が合憲か違憲かを知ることではなく、裁判所が、そう判断を下したその理由(裁判所の判旨)を理解することを指します。
行政書士試験の憲法の問題では、ある事件が違憲か合憲かを確認する問題も出されますが、その結論を導き出した理由(判旨)を問うものが特に頻出です。
例えば、私たちの大切な権利である「信教の自由」の「政教分離原則」について問題となった事件の1つ「愛媛玉串料訴訟」を例題として見てみましょう。
※政教分離原則というのは、国家と宗教が関わり合ってはならないという原則です。国家と宗教の結びつきを防ぐことで、間接的に個人の信教の自由を守るというわけですね。
【愛媛玉串料訴訟】(最大判平9.4.2)
(内容)愛媛県が靖国神社や県の護国神社に対して「玉串料」と称して公金を支出したもの
(争点) 当該行為が憲法第20条第3項、憲法第89条に反するか
(判旨)県が玉串料等を奉納することは、
・起工式の場合とは異なり、時代の推移によって既にその宗教的意義が希薄化し、慣習化した社会的儀礼にすぎないものになっているとまでは到底言うことができない
・その目的が宗教的意義を持つことを免れず、その効果が特定の宗教に対する援助、助長、促進になると認めるべきであり、そのかかわり合いが相当とされる限度を超える
(結論)上記の理由から憲法第20条第3項の禁止する宗教的活動にあたる。
そしてその支出は憲法第89条の禁止する公金の支出にも当たり、政教分離原則に違反する。
日本国憲法 第二十条
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
日本国憲法 第八十九条
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
引用: e-gov 法令検索 日本国憲法
行政書士試験では、この判旨の部分での引っかけ問題が非常に多いです。
ですから、この判例を学習する際には、
県の玉串料を奉納するという行為が、憲法第20条第3項、憲法第89条に違反するという結果を覚えるだけでなく、裁判所が下した
・玉串料を奉納する行為には宗教的意義がある
・玉串料を奉納する行為によって発生する効果が特定の宗教に対する援助、助長、促進にあたり、かかわり合いの限度を超える
という判断理由を理解することが大事です。
ある事件に対して、裁判所が条文をどのように解釈し、どのような結論を導き出したか。
その判断の趣旨を理解するように学習を進めましょう。
なお、判例は一般的なテキストに載っている範囲で充分であり、判例集を活用する必要はない、と考えております。
憲法の判例学習のコツについてはこちらの記事で解説しています
統治分野
国を統治する司法・立法・行政の三権に関連する内容が主に出題されます。
人権分野とは異なり、統治分野では条文学習が非常に有効です。
まずは、テキスト・過去問に出てくる頻出の条文の内容を正確に記憶しましょう。
特に、3分の2以上、40日以内等の数字や期間、そして衆議院解散後の流れ等が出題のポイントになりやすいです。
司法の分野では判例が出題されることがあります。
ある事件に対して、裁判所が条文をどのように解釈し、どのような結論を導き出したか。
その判断の趣旨を理解するように学習を進めるようにしましょう。
テキストや教材に出てくる判例を抑えるようにすれば十分対応できます。
統治分野は学習量に比例して得点が上がる分野です。
繰り返して勉強すれば点が取れるようになりますし、本試験でも安定して得点できるようになります。
憲法対策 まとめ
行政書士試験の憲法は、
分野ごとに
・判例を中心に、ある事件の結果とその判旨を理解するもの
・条文を中心に、正確に内容を暗記するもの
に分けて効率良く学習を進めましょう。
行政書士試験の憲法は、テキストの内容が頭に入っていれば半分以上は安定して得点できます。
しかし、満点を目指すとなると、一般のテキストには載っていない程度の細かい内容が出題されることもあり一気に厳しくなります。
憲法は行政法や民法と比較して重要度はそこまで高くありません。
憲法が苦手だったとしても、他の科目で十分にカバーできます。
時間を割き過ぎず、労力をかけ過ぎず、適切な時間と学習量で、過半数の得点を目指す。
このような意識で学習を進めてくださいね。
あめのうずめ行政書士講座では
あめのうずめ行政書士講座では、憲法の判例について受験者のみなさまに、わかりやすく・正確に、内容を理解できるよう解説していきます。
統治分野については、暗記を楽にできる方法や流れを体系的に覚えられる方法についてもお伝えしていきます。
これから行政書士試験の受験を考えている方、現在勉強中で勉強方法にお悩みの方、
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