行政書士試験と宅建

行政書士試験と宅建 実務知識編

行政書士試験と並んでよく名前が挙がる国家資格、宅地建物取引士。

今回の記事では、行政書士と宅建士資格の両方を持っている私が、

行政書士試験と宅建試験との相性とダブルライセンスのメリットについて現役行政書士の目線から、実際の業務の話も交えてお伝えいたします。

この記事を読めば、行政書士資格と宅建士資格のダブルライセンスを持つことによって、どのように仕事の幅を広げられるのか、どんな点で有利になるのかがわかります。

※実務目線での話多めです。

なお、行政書士の開業についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。

行政書士と宅建士

行政書士と宅建士の親和性は高いです。

これは行政書士試験と宅建試験との相性もそうですし、実際の業務の観点からもそうです。

まず、行政書士と宅建士の違いを説明した上で、どのように相性が良いのか説明します。

資格から見た行政書士と宅建士の立場

弁護士、弁理士、税理士、司法書士、行政書士、公認会計士、社会保険労務士、土地家屋調査士。

法律を扱う主な登録士業は全部で8つありますが、行政書士はその中の一つに数えられます。

難易度的には、行政書士試験は8つの法律系資格の中で一番低く、他の国家資格の登竜門として扱われることもしばしばで、

行政書士試験に合格した後、次に司法書士試験や司法試験の合格を目指す人も多いですし、司法書士試験の受験生が力試しで行政書士試験を受験することもあります。

ただし、世間一般の資格と比べると難しい資格に入ります。

一方、宅建士は知名度抜群で、不動産業界・金融関係・保険関係の就職に強く、コスパ最高の人気の国家資格です。

難易度的にもそこまで高くないため独学で合格を目指す人も多く、また、独学でも十分に合格可能な資格です。

宅建士を取得したから、行政書士を目指すという流れで取り組む人が多いです。

行政書士と宅建士の仕事内容

行政書士と宅建の仕事内容については、

国家資格の通信講座の雄、アガルート様がわかりやすく解説されていますので、そちらを引用させていただきます。

宅建士の主な仕事は、

①不動産の売買や仲介などの取引を行う際の重要事項の説明及び

②契約書等への記名押印

を行います。

不動産取引は様々な人がすることができ、法律に詳しくない人も取引をすることがあります。

契約の時に、宅建士が重要事項を説明することで、契約当事者が意図していない不利益を回避することができます。

例えば、不動産を改築しようと思って購入したのに、法律により改築できない場合があります。

このような場合には、後に売主と紛争が生じてしまうこともあります。宅建士は事前に説明を行うことで、このような不利益や紛争を未然に防止する役割を果たしています。

宅建士のこれらの仕事は独占業務であり、宅建士でなければできません。

また、法律により不動産会社の5人に1人以上が宅建士でなければなりません。

宅建士の需要は高く、かつ社会に無くてはならない資格といえるでしょう。

行政書士の主な仕事は、

①行政機関に提出する許認可等の書類の作成

②権利義務又は事実証明に関する書類の作成

③書類の作成に関する相談

となっています。

行政書士が行政機関に提出する書類を作成することで、事務の効率化を進めることになります。

例えば飲食店を始める場合、保健所への許可(飲食店営業許可)や消防署への届出(防火対象物使用開始届)をはじめ、様々な申請や届出を行う必要があります。

このような書類を代わりに作成し、提出することで、その飲食店は書類の作成の手間を省略できスムーズに開店することができます。

また、契約書の作成や遺言書に関するアドバイスなど、幅広い法律に関する書類の作成やアドバイスを行うことで、トラブルを未然に防止するという役割も期待されています。

行政書士の①②の仕事も独占業務です。

引用:アガルート

行政書士試験と宅建試験の比較

行政書士試験と宅建試験の比較してみます。

■試験内容

行政書士試験は行政法・民法・憲法・商法・会社法・一般知識の科目で構成されており

記述問題、足切り制度があるのが特徴です。

絶対評価であるため、他の受験生の実力に関係なく自分の実力次第で合格・不合格が決まります。

一般的に、行政書士試験は行政書士として身に着けておくべき知識が問われる試験(=教養試験)だと言われています。

一方、宅建試験は権利関係(主に民法)・宅建業法・都市計画法・建築基準法・農地法・国土利用計画法・税その他の科目で構成されており、実務で使う法律の内容が主に出題されます。

全問択一式で足切り制度はなく、条件を満たせば科目免除を受けられることが特徴です。

相対評価の為、周りの受験生の実力が高ければ合格が難しく、低ければ合格が易しくなります。

毎年、試験勉強せずに試験に挑む人が一定数存在していることも他の相対評価の資格試験と異なっている点です。

宅建試験は実務で使う知識を習得しているかを問う試験(=実務試験)です。

合格率、勉強時間については国家資格の通信講座の雄、アガルート様が詳しく解説されていますので、こちらを引用させていただきます。

■合格率

宅建の合格率はおおむね15~17%、行政書士の合格率は9~15%で推移していることが分かります。

行政書士試験の方が合格率の幅が大きいのは、絶対評価のため試験の難易度に左右されることが推測されます。

両方とも合格率は高くないですが、特に行政書士では10%を下回る年度もあり、宅建より合格率が低いといえるでしょう。

■勉強時間

宅建と行政書士の合格に必要な勉強時間を見ていきましょう。

宅建は、合格するまでに必要な勉強時間は200~300時間といわれています。

毎年20万人が受験し、3万人程しか合格しないので毎日しっかり勉強する必要があります。

行政書士は、合格するまでに必要な勉強時間は500~800時間といわれています。

およそ10人に1人しか合格できない狭き門といえるでしょう。

以上の点を踏まえると、

①行政書士の方が試験で幅広い知識が要求されしかも記述式など深い理解も試される。

②行政書士のほうが合格率が低く、合格までの勉強時間が長い

といえます。

よって、行政書士の方が難しいといえるでしょう。

引用:アガルート

見ていただいたように行政書士試験と宅建試験では大きく制度が異なりますので、宅建試験合格後に行政書士試験合格を目指す場合は、対策が必要となります。

なお、行政書士試験の配点や各科目の難易度等はこちらの記事で紹介しています

行政書士試験と宅建試験の相性

上記で見たように、行政書士試験と宅建試験ではほとんど関係している科目はありません。

しかし、宅建試験で学習した民法の一部の知識は行政書士試験に生かすことができますし、

宅建試験の試験勉強中に習得した法的思考力は行政書士試験でも大きく役立ちます。

知識が全くない人と比較すると圧倒的に良いスタートダッシュをきれます。

行政書士業務から見たダブルライセンスのメリット

行政書士として活動する上で、宅建士資格を持っていることは大きな武器になります。

行政書士と宅建士を組み合わせることで、仕事の幅が大きく広がり、同業他社との差別化によって売上を格段に伸ばせる可能性があります。

どういうことか詳しく説明します。

例えば、行政書士の業務の一つに農地転用があります。

農地転用とは農地を農地以外のものにすることです。

農地を宅地にする場合や工場用地にする場合に農地法の許可(届出)を得るための書類作成や手続きを行政書士が代わりに行う、という業務があります。

この時、農地法はもちろん都市計画法の知識も必要となりますが、宅建試験では都市計画法も農地法も学習しますので知識をそのまま使えます。

提出の手続きや書類の書き方等を少し学ぶだけで、行政書士事務所開業後すぐに、自信を持って農地転用の依頼を受任できます。

また、農地転用は開発許可申請業務と一緒に受任することも多いのですが、

この開発許可申請に関しても都市計画法や建築基準法等の宅建試験で学んだ知識をそのまま生かせます。

これらの業務では1件当たり40~100万という高額な報酬をもらえます。

※案件によります。農地転用と開発許可を一緒に受任した場合の金額です。

行政書士業界では、農地転用も開発許可も多くの法律知識(都市計画法や建築基準法等)が要求されること、手続きが複雑なことから、同業者がなかなか手を出しにくく、あまり人気のない業務です。

宅建士資格を持っている行政書士は既に都市計画法や建築基準法等の法律の知識があるため手を出しやすい業務ですし、上記の理由で周りにライバルが少ない為、この業務に特化するだけで差別化でき、大きな売り上げを得ることも可能です。

また、行政書士の許認可申請業務の一つに宅地建物取引業免許の申請業務がありますが、

宅建士資格を持っているだけでお客様の信頼を獲得することに繋がりますし、お客様との会話の話題としても活用できます。

その他、行政書士の業務の中で人気がある相続業務や在留資格関係業務等でも宅建士の資格が生きてきます。

宅建士資格を持っていれば自分一人で不動産会社を起ち上げることが可能ですから、行政書士として相続業務を受任し、相続業務の中で相談を受けた不動産について、起ち上げた不動産会社で売買仲介することもできます。

行政書士として外国人の在留資格の更新、変更業務を受任し、外国人の相談を受ける中で、外国人の住居探しや家の購入等の賃貸物件の仲介、物件購入の仲介を、起ち上げた不動産会社で行うこともできます。

不動産の売買の場合は、1件当たり何百万という手数料がもらえることも頻繁にありますから、不動産業務が出来なければ大きな機会損失になります。

相続した不動産の相談をしたいお客様にとっても、また別の会社を探して一から状況を説明しなければならないという面倒が発生し、親切ではありません。

ですから相続業務を主に考えている場合は、宅建士資格を取得して不動産会社を創ることも視野に入れておいた方が良いです。

実際、行政書士として相続業務を行い、宅建士として不動産業務を行っている行政書士の先生は多いです。

業務内容とは関係ないですが、宅建士は知名度が高く、それなりに難しい資格だという世間一般の評価もあって、名刺に【宅地建物取引士】と入れるだけで、お客様からの評価が高くなり、信頼されやすくなるという副次的なメリットもあります。

宅建士資格は、持っているだけで事業の幅が広がり、お客様の信頼を得やすいというとても大きなメリットがあり、行政書士としてもコスパ最高の資格です。

行政書士資格と宅建士資格まとめ

いかがでしたでしょうか。

行政書士試験と宅建試験では出題される科目も内容も大きく異なるため、一部の知識を除き、宅建試験で学んだ知識を行政書士試験にそのまま流用するのは難しいですが、宅建試験の学習で習得した法的思考力は行政書士試験でもとても役に立ちます。

また、宅建試験で学んだ知識は行政書士の業務で生かせる場面が多々あります。

試験の形式や制度、難易度も行政書士試験と宅建試験では大きく異なりますので、宅建試験合格後に行政書士試験合格を目指す場合は、別途対策が必要です。

行政書士の業務の観点から考えた場合、取り扱う予定の行政書士の仕事・業務に不動産が関わりそうな場合は宅建士資格の取得を目指すと良いでしょう。

機会損失防止、お客様への一気通貫のサービス提供が可能になります。

相続業務等、不動産が関わる業務を主としている行政書士の先生で、実際にダブルライセンスを活用し、売上を伸ばしている方は数多くいらっしゃいます。

宅建士資格を持っていると業務の幅が広がる、特に不動産業や建設業のお客様からの信頼を得られやすい等大きなメリットもあります。

まとめると、宅建士資格は行政書士にとってもコスパ最高の資格です。

あめのうずめ行政書士講座では

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行政書士試験受験者が無理なく一発合格できるように、学習時間や学習環境、ご自身の性格等をお聞きした上で、その人に合った勉強法と学習スケジュールを一緒に考えます。

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