行政書士試験受験生のみなさま。
試験科目の勉強の順番で合格率が大きく変わるって言ったら信じますか?
今回の記事では、勉強の順番で合格率が大きく変わる理由とおすすめの勉強の順番についてご紹介いたします。
この知識があるのとないのでは間違いなく勉強効率に大きな差が生まれます。
仕事をしながら受験する方、育児や家事労働がある主婦の方等、勉強時間が限られている方は特にそうです。
行政書士試験の勉強始める前の方も勉強中の方も、是非目を通してみてください。
この記事を読む前に、【各科目の難易度と傾向】の記事をお読み頂くとよりスムーズに理解できます。
なぜ勉強する順番が大事なのか
行政書士試験は、法令科目【憲法、民法、行政法、商法・会社法、基礎法学】と一般知識等の6つの科目で構成されています。
そしてこの6つの科目の中で、明確に重要度の差があります。
重要でない科目から勉強すると合格まで遠回りすることとなってしまいます。
重要な科目とそうでない科目を見極め、優先順位を付けることが大切です。
重要度が高い科目とその理由
重要度の高い科目とその理由について説明します。
点数配分を見れば、ある程度重要な科目とそうでない科目の見分けがつきますが、一部例外もあります。
(具体的な点数配分については先述の記事で紹介しておりますのでここでは省略します。)
まずは、重要度が高い順に並べてみると
行政法=民法>>>憲法=一般知識等>>>商法・会社法>基礎法学となります。
最も重要度が高い行政法と民法は行政書士試験の核であり、この2科目で合格基準点を超える程の高い配点があります。
その次に重要なのは憲法と一般知識等です。
憲法は、
・法令科目では行政法・民法に次ぐ配点があること。
・基礎法学や一般知識等の分野の一つである政治・経済・社会分野と関連があり、憲法を学習することでそれらの科目の勉強にも繋がること
この2つの理由で重要です。
一般知識等は、足切りの制度が設定されており、ある点数以上の得点が出来なければその時点で不合格となってしまいます。重要にならざるを得ません。
最後に商法・会社法および基礎法学については、配点がそこまで高くない上に、出題範囲が広すぎることが重要でない理由です。
現行の行政書士試験において、特に基礎法学については時間と労力を割けば割くほど逆に合格が遠いていく、という罠科目と言ってもよいかもしれません。
ちなみに行政書士試験での出題順は
基礎法学⇒憲法⇒行政法⇒民法⇒商法・会社法⇒一般知識等
となっています。
出題順にならって基礎法学から手を付けてしまうと、ものすごく非効率な学習をしてしまうことになります。
おすすめの勉強順
あめのうずめ行政書士講座では、配点が高い科目から重点的に学習すべきという考えから、
行政法=民法>憲法=一般知識等>その他という順番をおすすめしています。
最優先:行政法&民法
行政書士試験合格という目標から考えた場合、やはり行政法と民法を最優先で勉強するのがおすすめです。
これは極論ですが、行政書士試験は行政法、民法、一般知識でそれぞれ7割5分得点できれば、他の科目が全て0点でも合格できます。
それほど行政法と民法の重要性は高いです。
行政法は、自動車の運転免許の交付や悪質な事業者に対して行う営業停止処分、
コロナ禍で頻繁に耳にする「自粛のお願い」「休業要請」といった行政指導等、行政の組織運営に関連する法律をまとめたものです。
比較的私たちの生活になじみがあり、テレビやネットでよく見聞きするので想像しやすく、勉強するのに抵抗感は小さいと思います。
民法も私たちの生活に根付いた法律ですので、問題の場面をイメージしやすく、こちらも勉強するのに抵抗は少ないと思います。
このように行政法と民法は比較的とっつきやすい科目であることと学習時間と学習量に比例して実力が伸びる科目であるというのも大きな理由です。
確実に合格するためには、この2科目にしっかりと時間を割き、攻略することが必要です。
行き詰ったり、気分転換で行政法と民法を交互に勉強すると良いでしょう。
次点:憲法
そして次に勉強すべきなのは憲法と一般知識です。
憲法は国の基本となる最高法規であり、法律の頂点に君臨しています。
そのため、憲法には法律を学ぶ上で大切な基礎知識も含まれているのですが、こと行政書士試験においては民法や行政法とはそこまで関連がありません。(もちろんないわけではありませんが・・・)
どちらかと言えば、憲法で学習する知識は基礎法学や政治・経済・社会の分野に関係します。
憲法が次点の理由は、学習量と成績が比例しにくい、ということです。
憲法は司法試験や司法書士試験等、他の法律系資格の試験でも試験科目に含まれるほどの超重要科目ですが、どの資格試験でも総じて問題が難しいのが特徴です。
もちろん行政書士試験も例外ではありません。
実際に過去問を解いてみるとわかりますが、相当深く勉強しても全問正解するのは至難の業です。
問題が難しく、配点が高くない科目に時間を割くのは得策ではありません。
ですから、ある程度の学習量と学習時間で基礎を固める程度にとどめ、例年出題される比較的簡単な問題の正答を目指す。という戦略が有効です。
憲法は小中高で学習したこともあり、テキストや参考書に書いてある内容は覚えやすいと思います。
配点から考えても、行政書士試験の憲法は、行政法、民法での失点を補うための科目というのが正しい認識だと思います。
同率:一般知識
一般知識に関しては勉強すべき!!ではなく、勉強せざるを得ない・・・
というのが正しい表現かもしれません。
その理由は上述した通り、足切りの制度が設定されているためです。
一般知識はしっかりと勉強すれば得点できる分野と勉強しても得点しにくい分野とが明確に分かれています。
後々足切りで後悔しない為にも対策できるところは時間をかけてしっかりと対策するようにしましょう。
なお、勉強順では憲法と同率に設定していますが、
細かく言うと、文章理解(一般知識)>憲法>政治・経済・社会=情報 通信・個人情報保護
という順番がおすすめです。
文章理解が最初に来ているのは、文章理解に必要な読解力、解法テクニックの習得には時間がかかるというのがその理由です。
その他の順番は、憲法で学習した知識が政治・経済・社会の学習で活きること、情報通信・個人情報保護の学習は1か月あれば十分に終わるというのが理由です。
文章理解の勉強方法についてはこちらの記事で紹介しています。
また、一般知識(政治・経済・社会分野、情報通信・個人情報保護分野)の勉強方法についてはこちらの記事で紹介していますのであわせてお読みください。
その他:商法・会社法
商法・会社法と基礎法学はコスパ最低の科目です。
優先順位で考えると、
民法、行政法で安定して8割以上の得点ができるようになり、憲法、一般知識でも基本的な問題は確実に取れる万全な状態になった後、時間があれば初めてとりかかる。
それほど優先順位が低い科目です。
商法・会社法についてはしっかりと勉強すれば得点できる科目ではあります。
商法に関しては、比較的範囲が狭く、頻出ポイントもある程度決まっているため、他の科目で行き詰った時に気分転換として勉強するのはありかもしれません。
会社法は範囲が広く、全てを勉強するのはなかなか大変です。
商法と同じでよく出題される分野もあるのですが、問題が難しい時もあり、得点に繋げられない可能性があります。
会社法の学習に費やす時間を他の重要な科目に使う方が確実に合格の可能性を高めることができます。
余談ですが、実務で商法・会社法の知識を使うから勉強しておくべきだという意見があります。
現役行政書士の立場からこれについて意見を述べます。
確かに行政書士の業務のうち、会社設立業務や許認可業務等では、会社法の知識が必要になる場面があります。知識があった方が良いのはその通りです。
ただ、行政書士試験日から開業まで最速でも半年近くかかります。確実に内容を忘れます。
また、悲しいことに、行政書士事務所開業後、勉強する時間が全く取れない程忙しくなることはほぼありません。
会社法の勉強は開業後あるいは合格後から、実務の勉強と一緒に始めても良いのではないかと思います。それでも十分間に合います。
やはり行政書士試験合格という目標から見た場合は、どうしても商法・会社法の優先順位は低くならざるを得ず、残された時間や学習の進捗状況次第では勉強しないという選択も視野に入れるべきだと考えます。
ちなみに、商法・会社法は過去問中心の学習をおすすめいたします。
過去問10年分、全ての肢を理由付きで正誤判断できるようになれば、本試験でも3問前後は正解できる実力が身につきます。
その他:基礎法学
基礎法学については出題範囲が広いにもかかわらず、配点はたったの8点しかありません。
しかも何が出題されるか全くわからない、まさに闇夜に鉄砲の科目です。
(章末に過去問を2問掲載します。出題の範囲の広さをご確認ください)
しかし、基礎法学はその範囲の広さから、憲法の一部の内容と政治・経済・社会分野の内容をも包括しており、それらで学習した知識をそのまま流用できる可能性があります。
そのため、基礎法学の効果的な勉強は、基礎法学の為に何かを勉強するのではなく、
憲法と政治・経済・社会分野を勉強すること、になります。
そして試験には憲法と政治・経済・社会分野を学習して得た知識+今までの人生経験で得た知識で立ち向かうことになります。
例年、1問は比較的易しい問題が出されていますので、1問正解したいところです。
第二次世界大戦後に日本で生じた法変動に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1.敗戦後の住宅難に対応するため借地法と借家法が制定された。
2.労働者の権利を拡張するものとして労働組合法が制定された。
3.公正で自由な経済的競争を促進する目的で独占禁止法が制定された。
4.地方自治を強化するものとして地方自治法が制定された。
5.英米法的な観点を加えた新しい刑事訴訟法が制定された。
引用:行政書士試験 平成27年 問1
「判例」に関する次の記述のうち、明らかに誤っているものはどれか。
1.判例は、一般的見解によれば、英米法系の国では後の事件に対して法的な拘束力を有する法源とされてきたが、大陸法系の国では法源とはされてこなかった。
2.英米法系の国では、判決のうち、結論を導く上で必要な部分を「主文(レイシオ・デシデンダイ)」、他の部分を「判決理由」と呼び、後者には判例法としての拘束力を認めない。
3.判例という語は、広義では過去の裁判例を広く指す意味でも用いられ、この意味での判例に含まれる一般的説示が時として後の判決や立法に大きな影響を与えることがある。
4.下級審が最高裁判所の判例に反する判決を下した場合、最高裁判所は申立てに対して上告審として事件を受理することができる。
5.最高裁判所が、法令の解釈適用に関して、自らの過去の判例を変更する際には、大法廷を開く必要がある。
引用:行政書士試験 平成24年 問1
行政書士試験 勉強 順番まとめ
私自身、大学受験で数学と英語の配点が非常に高いことがわかっていたにもかかわらず、好きな科目から勉強し、大失敗した経験があります。
それからというもの、何かに挑戦するときは必ず優先順位をつけ、重要度の高いものから取り組むように戦略を立ててから挑むようになりました。
その結果、以前と比べて望む結果が残せることが格段に増えました。
身をもってツラく、苦い経験をしたことが教訓として生きています。
できれば行政書士受験生のみなさまには私と同じ経験をしてほしくない。
そんな思いで、この記事を執筆しました。
独学で挑む方、これから行政書士試験に挑戦する方は、勉強の順番で悩むこともあるかもしれません。
この記事が悩んでいる方の参考になれば嬉しいです。
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