行政書士試験 各科目の難易度と傾向

行政書士試験 各科目の難易度と傾向 心構え編

今回の記事は、これから行政書士試験を受験する人に読んでいただきたい内容です。

中国の古典、「孫子」に「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」という格言があります。

行政書士試験の出題科目の難易度と出題傾向をを知ることは、この格言中の「敵を知ること」に当たります。

出題科目の配点や対策法等も含め、行政書士試験の概要をざっと掴めるように記載しております。

効率良く学習を進める為にも、是非一度、目を通してくださいね。

行政書士試験概要

行政書士試験の概要は一般社団法人行政書士試験研究センターより公表されておりますので、こちらを引用いたします。

行政書士試験について

「行政書士試験は、行政書士法に基づき、総務大臣が定めるところにより、行政書士の業務に関し必要な知識及び能力について、毎年1回以上行うこととされ、行政書士試験の施行に関する事務は都道府県知事が行う自治事務(第3条)ですが、都道府県知事は、総務大臣の指定する「指定試験機関」に、行政書士試験の施行に関する事務を委任(第4条)して行わせています。

行政書士は、行政書士法第2条各号で定める者とされていますが、行政書士法第2条第1号の「行政書士試験」に合格することが早道です。

試験は、行政書士法第4条の規定に基づき、平成12年度から一般財団法人行政書士試験研究センターが総務大臣から指定試験機関として指定を受け、各都道府県知事の委任のもとに実施しています。」

引用:一般財団法人行政書士試験研究センター

※行政書士法第2条各号で定める者、については以下の通りです。

一 行政書士試験に合格した者

二 弁護士となる資格を有する者

三 弁理士となる資格を有する者

四 公認会計士となる資格を有する者

五 税理士となる資格を有する者

六 国又は地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間及び行政執行法人又は特定地方独立行政法人の役員又は職員として行政事務に相当する事務を担当した期間が通算して二十年以上になる者

引用:行政書士法 第二条

8士業と呼ばれる国家資格の中で、司法書士、社会保険労務士、土地家屋調査士以外は行政書士になれるということですね。

行政書士試験の受験資格

年齢、学歴、国籍等に関係なく、誰でも受験できます。

幅広く門戸が開かれているのが大きな特徴です。

行政書士試験 出題科目

行政書士試験の勉強を始める前に、まずは出題科目を把握しましょう。

行政書士試験は、法令科目と一般知識科目の2つの科目で構成されています。

法令科目は、基礎法学、憲法、行政法(行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法及び地方自治法を中心とする。)、民法、商法・会社法といった法律で構成されており、出題数は全部で46問となっています。

一般知識科目は、政治・経済・社会分野、個人情報・情報通信分野、文章理解(読解問題)で構成され、出題数は全部で14問となっています。

なお、法令については、試験を実施する日の属する年度の4月1日現在施行されている法令に関して出題されることになっています。

例えば、令和元年度(2019年)の行政書士試験には、令和元年4月1日時点で施行されている法律からしか出題されないということですね。

※令和3年11月現在の情報です。

行政書士試験 配点

ここ5年(平成28年度~令和2年度)の試験の得点配分は以下となります。


■5肢択一式(法令科目)  計160点
基礎法学   2問  8点
憲法     5問  20点
行政法    19問  76点
民法     9問  36点
商法・会社法 5問  20点

■5肢択一式(一般知識)  計56点
政治・経済・社会  7問 28点
個人情報・情報通信 4問 16点
文章理解      3問 12点
※14問中5問以下で足切り

■多肢選択式 1問2点 計24点
憲法  4問 8点
行政法 8問 16点

■記述式(部分点あり) 計60点
民法 2問 40点
行政法 1問 20点

計300点満点

行政書士試験 合格基準

行政書士試験は絶対評価型の試験です。

合格基準については以下のように定められています。

次の要件のいずれも満たした者を合格とします。

① 行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、満点の50パーセント以上である者

② 行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、満点の40パーセント以上である者

③ 試験全体の得点が、満点の60パーセント以上である者

(注) 合格基準については、試験問題の難易度を評価し、補正的措置を加えることがあります。

引用:一般財団法人行政書士試験研究センター

※一般知識等科目の満点の40%以上とは24点以上を指し、満点の60%とは、180点を指します。

業界関係者の間で②の要件は足切り制度と言われています。

例年、合格点を超えても②の要件を満たせなかったために悔しい結果となってしまう方が一定数います。

そのため、一般知識科目についてもしっかりと対策する必要があります。

一般知識科目の勉強方法についてはこちらの記事で紹介しています。

各科目の難易度

宅建士や社労士の試験と同じく、行政書士試験においても科目ごとに大きく難易度が異なります。

そこで、各科目ごとの難易度を5段階評価で表します。

星が数が多い程難しく、少ない程簡単です。

難易度は、範囲の広さ・理解のしにくさ・問題の難しさの3つのポイントで判断しています。

※以下の評価は、あくまで私個人の主観的なものとなりますのでご留意ください。

基礎法学 ★★★★☆ 

「法」に関連するあらゆる内容が出題されます。

出題範囲が非常に広く、対策がかなり難しい科目です。

問題の難易度が高いものもあれば低いものもあり、得点計算が難しい科目です。

憲法の知識、政治・経済・社会の知識を一部応用できる問題が出される可能性があるため、1問は得点できると思います。

もちろん、運が良ければ2問得点できる可能性もあります。

法律の性質や歴史等がよく出題されています。

基本的に、基礎法学に時間を割く必要はないと考えていますが、

もし勉強するのであれば、過去に出題された範囲の知識を固めた上で、こちらの参考書を使うのがよいでしょう。

憲法 ★★★★☆

小中高で勉強していることもあり、内容自体は比較的理解しやすい科目ではあります。

範囲も特に広くなく得点計算しやすい科目・・・

かと思いきや、そうではありません。

憲法では難問・奇問の類がたびたび出題されます。

これらの問題については、ほとんどの受験生が得点できないため合否には影響しません。

しかし、憲法の得点のボーダーラインを高く設定していると精神的なダメージを受ける可能性もあります。

憲法で全問正解するのは難しいという理解のもとで得点戦略を立てることをおすすめします。

とはいえ、5肢択一式の半分程度は勉強すれば得点できる問題が出ますので、これらの基礎問については確実に得点できるようにしましょう。

内容としては、判例の解釈に関するものから、司法・立法・行政の3権に関するもの、一般の教材には記載されていない程の細かいものまで幅広く問われます。

【理解と暗記】双方を求められる科目ですので、切り替えて勉強することが大切です。

憲法の対策についてはこちらの記事で紹介していますので、あわせてご確認ください。

行政法 ★★★☆☆

総得点の3分の1以上を占める、当試験の重要科目の1つです。

行政法の得点率が合否を大きく左右するといっても過言ではありません。

他法令と比較すると範囲はやや広いですが、易しい問題が多く、内容も理解しやすい科目です。

行政法は理解が必要な分野と出席議員数等の暗記が必要な分野で構成されています。

行政手続法や行政不服審査法、行政事件訴訟法、地方自治法等、特に出題される分野をしっかりと対策すれば点数に繋がりやすいです。

行政法では正確な理解と知識が求められます。学習の際には意識を徹底しましょう。

行政法の対策についてはこちらの記事で紹介していますので、あわせてご確認ください。

民法 ★★★☆☆

行政法と同じく重要科目の1つです。

民法は私人間の権利・義務を規律する法律のため、内容をイメージしやすく学習しやすい科目といえます。

物権分野と債権分野、親族・相続分野の3分野で構成されており、それぞれが満遍なく出題されるため、範囲は非常に広いです。

平均的な問題が多いですが、問題全体が難しくなる年もあり、変動が激しい科目でもあります。

また、時々難問奇問の類も出題されますし、他の試験ではめったに出題されない内容(根抵当権や質権等)についても出題されます。

難問奇問は捨て、基礎問を取る。このスタンスが大切です。

民法では正確な理解と法的思考力が求められます。

「なぜそうなるのか」を常に意識して学習を進めましょう。

なお、民法についてはこちらの記事で分析していますので、あわせてご確認ください。

余談ですが、相続分野の知識は行政書士の業務にも役立ちます。

商法/会社法 ★★★☆☆

コスパ最低の科目です。

商法の範囲はそこまで広くありません。会社法は範囲がとても広いです。

難易度的にはどちらも高くありませんが、時々難しい問題が出題されることもあります。

内容は会社の設立・仕組み・運営に関するものや、商取引に関するもので、興味がなければややとっつきにくいかもしれません。

時間に余裕がなければ切り捨てることも考えても良いと思います。

余談ですが、商法・会社法の知識は行政書士の業務にも役立ちます。

政治・経済・社会 ★★★★★

ある意味、当試験の最難関科目です。

範囲が広過ぎて対策が立てにくく、勉強しても中々得点に結びつかないこともあります。

その上、政治・経済・社会の分野だけで配点が28~32点と、一般知識科目の約半分以上を占めます。

一般知識科目の足切りの恐怖と相まって不安になった経験がある受験生も多いのではないでしょうか。

とはいえ、各国の政治制度や選挙制度、権利関係の歴史、日本の社会保障制度、環境問題、金融政策や国際経済、時事問題等の頻出の内容を一通り勉強すれば3問程度の得点は十分狙えます。

ちなみに政治・経済・社会はこの1冊で対応できます。

この参考書を使えば、法律の歴史、憲法成立の歴史等も一気に学ぶことができ、基礎法学対策にもなります。

とてもおすすめです。

時事問題も学習するならこちら

なお、一般知識の勉強方法についてはこちらの記事で紹介していますので、あわせてご確認ください。

個人情報・情報通信 ★★★☆☆

一般知識科目の足切り回避のため、得点源にしたい科目です。

個人情報保護分野は条文の内容がそのまま問われる分野です。

出題範囲も広くなく、内容的にも一般常識的なものが多いですが、条文に専門の法律用語が登場しますので注意が必要です。

例えば、パソコンの事を『電子計算機』、インターネットやウェブサイト、DVD、ICカード等の媒体を使って情報をやりとりすることを『電磁的方式』という表現します。

しっかりと学習すれば得点できる科目ですので、全問正解を目指すのが良いでしょう。

なお、個人情報保護の勉強方法についてはこちらの記事で紹介していますので、あわせてご確認ください。

情報通信分野は範囲が非常に広いですが、易しい問題が多いです。

スマホやパソコンなど、日常的に使うものに関する内容ですので、とっつきやすいと思います。

例年、SNSやIT等の情報・通信分野の専門用語の意味を問うものや、情報通信技術の構造・仕組みを問うものが出されていますので、これらに関連する用語を覚えるようにしましょう。

情報通信分野の勉強方法についてはこちらの記事で紹介していますので、あわせてご確認ください。

文章理解 ★☆☆☆☆

受験生の読解力を試すものであるため、範囲という概念はありません。

出題形式は1問ずつ異なりますが、高校入試レベルの易しいものが出題されます。

一般知識で足切りされないために全問正解、最低でも2問は得点したいところです。

文章読解が苦手な方は時間を費やして勉強しましょう。

訓練して解き方を覚えれば安定して得点できるようになります。

文章理解対策の問題集でこれに勝るものはありません。

完璧にすれば怖いものなしの最高の一冊です。

文章理解の勉強方法および易しい問題が多い理由についてはこちらの記事で紹介していますので、ご確認ください。

行政書士試験 各科目の難易度と傾向 まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は自分の考えや経験をもとに各科目の難易度を分析し、お伝えいたしました。

(人それぞれ感じ方が異なるため、あくまで目安として参考にしていただければ幸いです。)

独学で挑戦する方は、予備校や資格学校、通信講座を利用している方と比べると、どうしても情報が少なくなってしまいます。

この記事で紹介した内容等を参考にしていただき、自身に合った戦略を立てるのに役立ててもらえれば嬉しいです。

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